さよなら・・タロウ

「花子の大往生」はこのブログに書いたとおりだったけれど・・

タロウの最期は、それ以上の・・信じられない位の大往生だった。

タロウのことも書かなくては・・花子の時のように。

それがタロウへの餞だから。

きっとそうに違いないから。


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花子の時になんとなく死を予感したように

タロウの場合も、覚悟はあった。


4月も中旬に入った頃から

風邪をキッカケにタロウが食欲を全く失った。

もう絶対に食べないと、まるで決めたように、その断食は徹底していた。


最初のうちは水だけはかろうじて飲んだけれど、それもやがてしなくなった。

無理やり飲ませた薬も、途中からはもう飲ませられなかった。


でも、タロウは少しも辛そうではなかった。

フラフラと自分の好きな場所を求めて、

そこで好きなだけ横になって一日を過ごしていた。

それは私達の布団の上であったり、外の日向であったり、自分の寝床であったりした。



タロウは特にダンさんになついていた。

タロウは人も猫も、誰をも拒むことのない

オットリと性格の良い猫だったが、それでも特にダンさんを慕っていた。


タロウが体調を崩してから

ダンさんは一階に布団を敷いてタロウと寝ていた。

いつもは二階の寝室のベッドにタロウも寝ていたが

体調を崩してからは、階段を上がれなくなっていたので。



ある夜

ダンさんがゆっくり寝られないだろうと思い、私が代わりに階下に寝た。


でも・・その翌朝、目が覚めるとタロウがいなかった。

タロウは・・ダンさんの姿を求めて

夜中にフラフラと二階の寝室に行き、

ダンさんの隣に潜り込んでダンさんの腕枕で寝ていたのだ。

足腰が立たなくなっていて階段を登ることなど、できるはずも無い身体だったのに・・

ベッドに飛び乗る体力など、残ってるはず無かったのに・・

それからはもう、ダンさんはずっと階下でタロウと寝た。


タロウが食べ物を受け付けなくなってから一週間以上が経った週末。

私は、本音を言うと、この週末にタロウが旅立つ事を密かに望んでいた。

もう絶対に助からない・・それを確信してる今、せめてダンさんのいる週末

ダンさんの見守る中で生涯を終えて欲しい・・そう思った。


それに加えて週明けの月曜日、つまり翌日、

息子がカナダに移住するために長野を発つ。

動物好きでタロウを可愛がっていた息子に、

できたらタロウの最期を見送って欲しかった。


そして日曜日・・

タロウはただただ寝ていた。

呼吸が乱れる事もなく、苦しそうな表情をすることもなく、ただただ寝ていた。

あまり静かに寝ていて不思議なくらいだった。

このまま逝ってしまうんだろうか?

そんな事ってあるのだろうか?


たくさんの猫の最期を見送った私は、

どんなに大往生の猫も最期は苦しそうな表情をするのを知っていた。

最期まで死に抵抗して全身で頑張る姿を見てきた。

でも、タロウは今の今まで少しも、ほんの少しも苦しんでいない。

今だってこんなに規則正しい呼吸で寝ている。

もしかしたら、このままずっと生き続けてくれるかも・・そんな風にも思った。


午後になって、窓際の籠で寝ていたタロウが

テラスの外を見て、わずかに首を動かした。

外に出たいのだろうと思った。

こんな天気の良い日、タロウはよく一人でテラスのガラス戸を開けて

庭先でひなたぼっこをしていたから。

「ひなたぼっこしたいんだね、しようね」

戸を開けて、そっとタロウを外に寝かせた。

爽やかな風と暖かな光の中でタロウは満足そうに静かに横たわっていた。


その夜

ダンさんがタロウの横で

身体を撫でながらテレビを見ていた。

タロウはやはり静かに呼吸も乱れず寝ている。


8時過ぎ。

ダンさんが、エッとした表情で「タロウ?」と言う。

私と息子は急いで駆け寄った。


タロウの心臓は、ダンさんの手の平の下で、止まった。

「死んじゃった・・・」ダンさんがポツリと言った。

まるで・・ホントに寝ているような顔をしていた。

「眠いから寝るね」

そう言って目を閉じたような顔をしていた。

タロウ自身も、きっとそんな感じで意識が遠くなっていったんだと・・思う。


ダンさんはタロウの身体をずっとずっと抱いていた。


タロウ・・お前は凄い猫だよ。

ちゃんとダンさんのいる今日、

そして息子のいる今日、死んじゃって・・

しかも本当に眠るみたいに死んじゃって・・


タロウはうちに来た時から、親孝行な猫だったけど

最後の最後まで、

私達の気持ちに沿って生きてくれたのかな・・そんな気もする。


タロウ、ありがとう

たくさんたくさん、タロウに教えて貰ったよ。楽しませてもらったよ。



そして花子・・待たせたね。


そっちでタロウを頼むね。

花子がコッチに居るときよりも随分スマートになって驚いた?

やっとまた二人で寄り添えるね。

タロウをよろしくね。


さよなら・・タロウ

ありがと・・タロウ

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by dansantokamisan | 2008-05-09 16:18 | 猫のいる風景